私の書斎の一角に皇室関係の本棚が並んでいる。
それらの本棚の1つに、天皇・皇后両陛下のこれまでの
「おことば」や御製・御歌などを収めた本ばかりの棚がある。その棚に御歌集『ともしび』も。
宮内庁東宮(とうぐう)職の編集。
昭和61年12月23日(!)に刊行された。
当時は皇太子・同妃であられた両陛下の御歌集だ。
天皇陛下の御製(ぎょせい)166首(うち6首は琉歌)、
皇后陛下の御歌(みうた)140首を収める。「ともしび」という題名は、昭和32年の歌会始の御題
「ともしび」によって詠(よ)まれた、次の御製にちなむ。
ともしびの
静かにもゆる
神嘉殿(しんかでん)
琴はじきうたふ
声ひくく響く
静寂かつ幽遠。神秘な時間の雰囲気が伝わる。
改めて申すまでもなく、皇室祭祀の中でも特に大切な
新嘗祭(にいなめさい)を詠まれた御作。
表紙の色は「皇太子」の御装束の黄丹(おうに)色。
オウダンとも読んで、紅(くれない)を帯びた梔子(くちなし)色だ。
「ともしび」の色も想起させる。この御歌集に、皇太子殿下がお生まれになった
昭和35年の皇后陛下の御歌として、次の1首が掲げられている。
あづかれる
宝にも似て
あるときは
吾子(わこ)ながらかひな
畏(おそ)れつつ抱く
皇太子殿下は皇后陛下にとって勿論(もちろん)、
我が子(“吾子”)である。
しかし、やがて将来は126代の天皇となられる御方だ。
その事実を思うと、人様から預かった大切な宝物のように思われて、
抱き上げる腕(“かひな”)も畏れ多さに緊張を禁じ得ない。
そんな趣旨の御歌だ。皇后陛下がどのようなお気持ちで、
皇太子殿下のご養育に当たられたか。
その一端を窺(うかが)う事が出来る。
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